~黒海、バルト海を封じられた場合、ロシア艦隊は北方領土に集中せざるを得なくなる?~AFPニュース考察

(2022年4月21日投稿)

解説

今回はAFPニュースで報道された一つの記事について考察していきます。記事の内容は「フィンランド、NATO加盟申請の可能性高い」というタイトルの記事になります。このAFPニュース記事の内容は、フィンランドの欧州問題相であるトゥップライネン氏が「我がフィンランド国が北大西洋条約機構、NATOへの加盟を申請する可能性は高い」と明言したことを取り上げています。

イギリスのスカイニューステレビに出演したトゥップライネン氏は、「ロシアによるウクライナへの軍事作戦は我々すべてに対する警鐘だ」と語り、ロシアによる核兵器を含めた軍備強化の警告に反発したことをニュースで述べられました。

フィンランドは、ロシアと約13百キロの国境を接する国です。フィンランド国民は長年、軍事非同盟主義の方針を取っており、NATOへの加盟を拒んでいました。しかしロシアによるウクライナへの特殊軍事作戦後、この長年続いた軍事非同盟主義に対する世論が一変し、NATO加盟の支持が急拡大したわけです。

このような世論が急拡大したことを背景に、フィンランドのマリン首相は4月13日、NATO加盟に意欲を表明し、数週間以内に申請の是非を決める方針を明らかにしました。またフィンランドの隣国であるスウェーデンもNATO加盟に前向きな姿勢を取るようになり、スウェーデンのアンデション首相も「十分な検討が必要だ」とした上で早急にNATO加盟を判断する意向も続けて示すことになりました。

このフィンランドとスウェーデンの「NATO加盟申請の可能性高い」という話に対しまして、ロシアの元大統領であり、現在、安全保障会議幹部のメドベージェフ氏は次のように述べられました。

「フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟すれば、ロシアはカーニンググラードとバルト海で防衛を強化する必要がある」「もしフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した場合、バルト海のいかなる非核化についても協議するのは不可能になる。バランスを再構築する必要がある」

この発言にある「バルト海のいかなる非核化についても協議するのは不可能になる」とは、どういうことかと言えば、「ロシアはバルト海において核を準備する」ことを述べているわけです。これまでロシアは、バルト海において核の配備を行わなず、これからも核配備を行う考えはないことをメドベージェフ自身が過去に述べていました。

ここでフィンランドとスウェーデン周辺の地図と見てみると、フィンランドはロシアと国境を13百キロ接しています。

13百キロとはどのぐらいの距離かといえば、東京から福岡が直線距離で約880キロになるので、それよりも長い距離になります。このような膨大な距離を、フィンランドとロシアは国境で接しています。さらにフィンランドの隣にはスウェーデンが存在します。このフィンランドとスウェーデンは、NATOに加盟していませんでした。

それからメドベージェフは先の報道において、カーリニンググラードとバルト海の核配備について述べていましたが、カーリニンググラードとはどのような地形にあるのか、次の地図を見ればお分かりになると思います。

参考記事:ダイアモンドオンライン

ロシア西側の国境には、エストニア、ラトビア、リトアニアの3つの国があり、これらの国はバルト三国とも呼ばれています。そしてこの3カ国を飛び越えてカリーニンググラード、いわゆるロシア領があることがお分かりかと思います。

なぜこのような地形になったかを言えば、このバルト三国は、元々、ソ連領でした。ソ連が崩壊した後に、バルト三国は独立したわけであります。ただカリーニンググラードは、そのままロシア領として残りました。そしてバルト三国とカリーニンググラードのカリブ海を越えた向こう側には、フィンランドとスウェーデンが存在しています。

すでにエストニアとラトビア、リトアニアはNATOに加盟しています。ぞじてバルト三国がNATOに加盟する時は、当然ロシアも反対したわけでありますが、ロシアに対してミサイルを配備しないということを条件に、ロシアは渋々このバルト三国のNATO入りを承認したわけであります。

ここでもし、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した場合は、どのようになるでしょうか。このバルト海の周辺の国々の大半がNATO加盟国となります。そうなるとロシア艦隊はこのバルト海を無許可で使えなくなる訳であり、ロシアの国防上、大変、危機的な状況になるわけであります。

ロシア艦隊が配備されているところは、バルト海の他に黒海があります。この黒海周辺にはウクライナが存在し、このウクライナ領のクリミアにロシア艦隊が配備されているわけであります。クリミアが欧米に完全に抑えられ、さらにバルト海まで完全に抑えられてしまうと、ロシア艦隊はバルト海と黒海を使えなくなるわけであります。

ロシアの広大な国土の北側は北極に面していますが、ここは常に凍った状態になっているため、ロシア艦隊を配備することができません。もしバルト海と黒海が完全に抑えられたらどうなってしまうでしょうか。実はこの問題は日本の安全保障にとっても極めて重要なニュースになるわけです。

もしロシアがバルト海と黒海を欧米側に完全に抑えられた場合、ロシア艦隊をどこに配備するかといえば、北の国土方面が氷で覆われた海であるため、ここは使えません。当然、ロシアの極東方面に配備することになります。つまりロシア極東や北方領土にロシア軍を配備することになるため、日本の安全保障にとって極めて重大な危機になるわけです。

従いまして、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟は、日本にとって他人事では済まないことでもあります。ここで未来を読み解くとすれば、もし日本がロシアを敵国として排外的な政策を取っていくのなら、ロシアからの日本に対する軍事的な圧力が一層強まることになります。

今回のウクライナ紛争において、岸田政権は欧米に追随し、対露制裁に参加しています。これまで岸田政権は北方領土に対して「不法占拠」の表現を控えていましたが、ウクライナ紛争の後に「不法占拠」の表現を積極的に使い、ロシアを批判するようになりました。

これに対してロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長は、「日本がロシアとの衝突へと進路を変えるならロシアもそれに反応せざるを得ない」とコメントしました。今、岸田政権は日本のかじ取りを大変危うくしているわけです。

日本は欧米追随を止め、正しい政治判断をする必要があります。もし、今の延長上で日本がロシア制裁を続けると、日本もやがてウクライナと同じような国家存亡の危機が来る可能性が極めて高くなったのです。日本にとって最大の危機とは、中国・北朝鮮に加え、ロシアまでもが敵になることです。中国・北朝鮮・ロシアの3正面を敵にして、日本を護る手段はないことを知らねばならないのです。

このような国防上の危機を回避するためにも、政治家は正しい判断をし、日本の安全を守る責務を果たすべきと考えています。

☆画像引用元:ウィキペディア
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☆音楽引用元:ニコニ・コモンズ
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