マクロン「最悪なのはアメリカ追随」発言で世界が震撼!?「ウクライナを守る=台湾を守る」は誤った認識~フォーカス台湾、読売ニュースを徹底考察!
(2023年4月26日投稿)
解説
本日は、フランス・マクロン大統領の発言が世界中で物議を醸していますので、このことについて、解説していきたいと思います。
まず読売新聞において、「【台湾の現状変更を認めない。マクロン大統領が軌道修正か!? 最悪なのは米追随】発言で批判」という見出しの記事がありました。
この記事には、マクロン大統領が4月上旬に中国を訪問し、習近平と会談後、次のような発言をしたことが世界中で問題となっていることが書かれていました。
「最悪なのは欧州、いわゆるヨーロッパがアメリカに追随しなければならないと考えていることだ」
この発言に対して、国際議員連盟から、「このマクロンの発言は、ヨーロッパを代表する見解ではない」と表明し、マクロンは国の内外から批判を浴びたことが、読売で紹介されていました。
次に、フォーカス台湾には、「マクロン大統領の台湾をめぐる発言、国際議員連盟が批判」という見出しの記事が掲載されていました。
フォーカス記事の内容をもう少し詳しく述べてみますと、マクロン大統領は、「欧州は、アメリカ・中国のどちらにも追随すべきではない」と独自の考えを述べ、これに対して、国際議員連盟が猛批判したことが紹介されていました。
国際議員連盟とは、「対中政策に関する列国議会連盟」とも呼ばれていますが、この組織がさらに声明を続け、次のように述べたわけであります。
「マクロの発言に失望した。マクロンの発言は世界の議員と全く歩調が合っていない」
「台湾の人々の民主的な声は、尊重されるべきだ」
さらにこれらの様子を聞いた中国は、「台湾に無関心だとのメッセージを送る最悪のタイミングとなった」と言明しています。
ここで、国際議員連盟という組織の名が出てきます。国際議員連盟は日本・イギリス・オーストラリア・カナダ・ヨーロッパ・台湾などで組織されています。
2020年に、中国が香港に対して国家安全法の導入決定を可決したと同時にこの連盟が結成されました。つまり、国家安全法導入のタイミングで結成されたということは、中国包囲網を目的とした連盟ということになります。
この国際議員連盟が、フランス・マクロン大統領の発言に猛抗議したことをフォーカス台湾は紹介していたのです。
これらの様々な発言を受け、アメリカ共和党のルビオ上院議員は、次のように批判したわけであります。
「ヨーロッパが台湾情勢に関して、アメリカ・中国のどちらにつくのか態度を明確にしないのなら、我々もウクライナ問題は欧州だけで対応すればいい」
このように、マクロンの発言に対して、世界中が衝撃を受け、「このマクロンの発言はEUの結束に反する」と批判が殺到したわけであります。
台湾はもちろん、日本人の多くもこれらの新聞記事と同様に、マクロン発言の批判に賛同しました。
このように世界中では、マクロンの考え方は極端に聞こえていますが、よくよく考えてみれば、マクロン発言は、実はまっとうな考えであり、ごく当たり前の発言をしたわけであります。
例えば一例をあげますと、1960年代、アメリカとソ連が世界の覇権を争っていたとき、この当時のフランス大統領はドゴールでした。ドゴールは、米ソ対立が激しい時に、何と核開発を表明したわけであります。
これに対して、当然、アメリカは猛反対しましたが、ドゴール大統領は、「自国の安全保障のためだ」という固い決意のもと、アメリカの猛反対を押し切って核開発を強行し、こうしてフランスは、世界で4番目の核保有国となったわけであります。
今回のマクロン大統領の発言も、大多数の世論で考えれば、「EUの考えを全く無視した勝手な判断」と思われていますが、本来、「同盟」という正しい意義を考えれば、同盟とは隷従・隷属ではなく『対等の立場』であるわけです。
つまり、自国の考えを述べても構わないわけで、相手国に対して意見を言える立場にあるというのが本当の同盟の意味であります。
同盟とは本来、対等な立場であると考えるのが妥当なわけです。つまり、結論から述べれば、マクロン大統領は、決してヨーロッパの結束を崩す意思はないと考えて良いと思います。
それは、今回のマクロン大統領が中国への訪問した際に、欧州委員長のフォンデア・ライエン氏を同行させているということからも明らかです。
ではなぜ、マクロン大統領の発言に対して、世界中にこれほどのショックが広がったのでしょうか。
それは、多くの人たちの考えの中に、『ウクライナを守る=台湾を守る』という誤った一般論があるためです。
そもそも、ウクライナという国はもともと、北朝鮮のミサイル開発の関与で疑いを持たれていた国であります。
さらに中国にとっては、ヨーロッパ方面への一帯一路構想の最重要拠点であり、中国とウクライナとの貿易量が年々、急増していたわけであります。
さらに、ウクライナ国内には、アゾフ大隊の問題がありました。次の画像にもある通り、アゾフ大隊のシンボルとなっている旗は、十字架に鉤をかけたイラストとなっています。この旗はあのナチスの旗に酷似していることからもわかるように、アゾフ大隊は、ナチスを信奉していたわけであります。
このネオナチと呼ばれたアゾフ大隊のロシア系住民への人権侵害や虐殺がひどいため、過去に国連で取り上げられ、大問題になりました。
このようにウクライナという国は、様々な問題を抱えており、民主主義国とは程遠い国でありました。
つまり、台湾とも大きく異なる国柄でもあったわけであります。
そのため、ヨーロッパ諸国の本音は、ウクライナにはNATOに加盟してほしくなかったわけであります。
例えば、今回のロシアとの紛争において、本当にNATOがウクライナを守る考えがあれば、本格的に参戦してもおかしくありませんが、現実は今もなお、武器支援あるいは義勇兵のみの支援となっており、国軍をあげての参戦は行っていません。
もしウクライナがNATOに加盟していた場合、NATOには集団防衛の義務が生じるため、ウクライナに国軍を派兵する義務ができていまうわけです。ヨーロッパ諸国は、それだけは避けたいわけであります。
そのため、ウクライナのNATO加盟を前向きに検討すると言いつつも、なんだかんだ理由をつけて延期、あるいは保留させているという現実があるわけであります。
さらに実際の現実問題として、NATO、いわゆる北大西洋条約機構には、その組織名称のとおり、台湾防衛の義務はありません。もちろん、台湾防衛の条約も交わしていません。
つまり、台湾有事が起きてもNATOが台湾を守るということは起こり得ないというのが結論であります。
岸田首相を含め、多くの日本人はウクライナで貸しを作れば、台湾有事が起きた時、NATOは支援してくれるだろうと思っているでしょうが、そらは大変甘い考えです。
現実的なものを見てみると、ヨーロッパが派遣できる海軍艦艇は、本当に微々たる数です。さらに、ヨーロッパと東アジアでは距離がありすぎるため、有事が起きた時には、時間的に間に合わないわけであります。
つまり、台湾有事の際にNATOの援軍を期待する考えは、まさに絵に描いた餅なのです。
今、ヨーロッパ諸国は、中国への経済依存度が非常に高い状態です。そのため中国への制裁は、ロシア制裁以上に躊躇し、台湾有事への関与をためらう可能性が極めて高いと言えます。
そしてEU諸国の中では、ポーランドのように中国と密接な関係を築いている国が数多くあります。
このような現状を考えれば、ヨーロッパが中国と軍事的に対抗するのは一定の疑問があると考えるのが妥当なのではないでしょうか。
このような事例を踏まえ、日米同盟とは、本来、主従関係ではないことに気づくべきではないかと私は考えます。
フランスは以前から、アメリカの意向を無視することを度々起こしていますが、アメリカとの友好な関係を、常に維持しています。
それからインドもそうです。インドも過去にアメリカの意向に反したことがあります。
インドはフランスと同様に、アメリカの反対を押し切って核保有を実現し、今回のロシアに対しても、アメリカの意向に反して、ロシア制裁に加わっていません。
むしろ、インドはロシアとの貿易量を増やしており、ロシア経済を大きく支えています。しかし、アメリカとの関係は今もなお、繋がったままです。
むしろ日本は、このようなフランスとインドの自主外交を見習うべきであると私は考えています。
行き過ぎた「アメリカ追従型」「アメリカ隷属型外交」は、日本という国を危うくするということに気づかなくてはいけません。
もしバイデン政権の政策に誤りがあるのであれば、それに対してただ従うのではなく、日本も意見を言うべきであります。それが真の同盟国と言えるのではないでしょうか。
本日の解説は以上となります。ありがとうございました。





